クオリアクオリア

未知なる感覚質を求めてー。

【NGT-新潟】壊すのは楽しい。それは、つくる楽しさなんだ。

過去に見たとても鮮明だった夢をまるで現実に体験したかのように覚えている。婚約証明書にはすでに『嘉向 徹』と書かれていて、もう一方の空欄を隣に座る女性がゆっくりと埋めていく。たいてい、この辺りから記憶がうやむやになるけれど、今でもその名前は忘れられない。彼女の名前は『作』だった。サクと読む(のだと思う)。

 

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北陸の孤島、生まれ故郷・新潟には農家が多いらしい。私の数少ない友達、同級生Yくんの自宅にも祖父が使っていた農作業用の小屋がいくつかあり、そのどれもが今ではほとんど朽ちてしまっている。このことが家族内で議題に上がり、Yくんはこの小屋をどうやって処分しようか、と思っていたところだった。そこでなんとなんと「とおる小屋壊せる?」と僕にお手伝いの打診をした。

 

形あるものの破壊

Yくんからの連絡に「大好きです!」と勢いよく二つ返事をした。小屋を壊すことができれば、空いたスペースを駐車場として使ったり、皆で集まりBBQをしたりできそうだ。僕は解体のなんたるかを全く知らない。が、数ある思い出の中に心当たりをひとつ見つけた。世にも有名な玩具『ジェンガ』である。家もジェンガも一番上から取り除いていけば大丈夫(なはず!)。

 

ということで、まずは中のお掃除から始まり、屋根瓦を降ろし、外壁のトタンを外す。すると木でできた骨組みだけが残る。購買したチェーンソーを駆使して柱に切り込みを入れていく。も、一向に崩れない。どんどん切る。も、一向に崩れない。ほとんどの柱をぶった切る。も、崩れない。建物ってすごいなああ!!

 

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どう考えてもこれを切れば家が崩れるぞ、という柱を切った。危うく下敷きになりかけたが、最終的にはうまくいった。このやり方が正解がどうかはわからないが、気分は上々である。あとは屋根部分をぶつ切りにして処分、土台のコンクリートはホームセンターでゲットした4千円のビッグハンマーで砕く。ゴルフスイングの反動で腰骨も砕けそうになったが、日頃のスクワットが功を奏した。仕上げに地面をスコップで平にする。

 

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指をパチンと鳴らすと

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はい、綺麗さっぱり☆彡使用したアイテムは、軽トラック・チェーンソー・ハンマー・ロープ・バール。その他は、目を守るためのグラスとドラッグストアで売っているマスクと手袋くらいだった。合計で10日間ほどかかったけれど、次はもっと早く壊せるような気がする。

 

 

マイホームよりもマイブレイク

空き家が空き地になる。思い出の詰まったものがなくなり土地だけが残る。木でできた船(稲を運ぶためのもの)や大量の木枠などのヴィンテージ品もたくさん捨てた。それらはYくんの祖父や祖母、また彼らと共に汗を流した方々の思い出が詰まっているであろう物たちだ。悲しいように聞こえるかもしれないけれど、小屋を壊しているととても清々しい心地がした。

 

昔の言葉で「夢のマイホーム」というキャッチコピーがあったけれど、今回の経験を通して(個人的に)「マイブレイク」の時代に突入したなぁと思った。全員が全員これが僕のマイホームです!と宣言しても有り余るんじゃないかというほど空き家は多い。し、もはやマイホームは全然夢ではない。これからは家を壊してスッキリした土地を次の世代に渡すことが「夢」なのではないでしょうくぁ!

 

しかしながら、家を壊すのはそう簡単ではない。というのも、家が朽ち、敷地に草が生い茂り、蜘蛛や蜂がわいわい暮らす虫シェアハウスへと変わり「人類滅亡」を示すかのような悲壮感が漂っていても、家主さんは家を手放したり、壊したりしない。理由は様々だろうけれど、たぶん、思い出がたくさん詰まっているからだと思っている。家は朽ちても思い出は色褪せず。結果、「家だったもの」が、手のつけられない状態で漬物石のように大地にのしかかったままで終わる。誤解を恐れずに言えば、近頃の老人はこれだから困る。(あらまあなんて口の悪い!!!)

 

 

愛を持って壊す

日本に必要とされる人間(=空き家クラッシャー)の心得として忘れてはならない大事なことがある。それは『愛を持って壊す』ということだと思う。

 

まず、一家の大黒柱として農業を営み小屋を建てまくったYくんの祖父に感謝。そして、秋には空き地でBBQやろう〜とか、子連れの友人が来たときでも小さい子が遊べるように〜と考える。朽ちたものに宿る先人たちの想いを想う。その想いを(農業も継がないし作業小屋もこれからぶっ壊すけれどフィーリングでここぞというポイントだけはしっかりと)受け取るぞ、という気概を持つ。

 

愛を持って壊すということは、過去の思い出に浸るのではなく今この時点からどんな思い出を作るか、未来に向かって思いを馳せるということだ。

 

そのためには、今あるものに目を向ける前に一旦ゼロベースで考えること。何もないこの空間に何があったらいいかなぁという妄想を膨らませながら物を捨てる。何を残そうかなどと考えているとちょっとずつ、ちょっとずつ荷が重くなる感じを覚える。だから、いっそのこと全部なくすくらいのつもりで(そういうお祭りだと思って)挑む。この土地と自身の心に清新な風が吹きますようにと祈りを込めながら、はいはいはい!!と捨てまくる。右脳にピンと来たものはしっかり綺麗に拭き上げてしまっておく。何もない=ゼロベースを基準に、この場所に存在してほしいものはなにかなぁと構想を練る。

 

未来を決めることはできない。けれど、未来を描こうとすることはできる。どちらにせよ、うまくいったりうまくいかなかったりする。でも、そうやって現在を能動的に生きていると、結果はどうあれなんだか楽しくなる。それがつくる楽しさなのだと思う。

 

 

 

 

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壊すのは楽しい。それは、つくる楽しさなんだ。

小屋を壊すに当たって、当然だけれど、壊し方を考える。普段は考えたこともなかったのでスマホで資料を漁ったり、ホームセンターの店員さんに聞いたりする。試行錯誤を繰り返しながら建物を少しづつ破壊しているとき、自分が「建物のつくり方を知りつつあること」に驚愕した。え、やばい。これそのうち家建てられるようになっちゃう!破壊から創造が生まれることを思い知った。

 

子どもに与えるおもちゃは壊れる(壊してもOK)ものが良いと聞くが、本当にそうだなと思う。実際、壊してみて学ぶことは多かったし、何より楽しかった。壊すとか破壊などという言葉にはネガティブイメージを抱きがちだけれど、本質はポジティブなのだと思う。破壊する過程で創造することを学ぶ。つくるれるという安心感があれば、壊れることを恐れる必要はなくなる。

 

いま僕は「年内に5軒壊すこと」を目標に生きています。なんとなく、家を5軒破壊したら1軒はつくることができるような予感がしたからで、絶賛ご依頼募集中で、あります。そして、壊した者としてはやはり、同じように作ろうとは思いません。今の時代ならではのサイズ感で手軽につくりたいと思います。人がひとり寝られるくらいの、ちゃんと横になれて雨風をしのげて、いろんな意味でちゃんとひとりになれるお家。クーラーはなくてもハッカ油があり、電気は来てなくてもキャンプ用の小さなランプがあるお家。

 

おしまい!

 

 

 

 

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五壊一作の理└( ^o^ )┐

 

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嘉向 徹(カムキトオル)

kamukitoru2017@gmail.com

08043952258

空き家クラッシュ目標達成まであと4軒

 

 

<あとがき>

 

あの夢を見た直後は作(サク)という名前の人が将来のお嫁さんだと信じ込み、草の根を分けて探しまくった。が、現代の流行りではないからか、そのような名前の人は見つからず。半分諦めかけ、自分の名苗字(嘉向)のルーツを探しに市役所へ赴き、戸籍謄本を調べ上げたところ、遡ったところに7なんと「サク」という名前の女性がいた。ちょっと怖い話っぽいけれど、徹はなんだか心温まったのでした。

 

めでたしめでたし。



<今後の予定>
*実りの秋は、イベントも目白押しです*
8月某日〜9月14日は北陸の(リアル)孤島・佐渡ヶ島にてお家クリーニング
9月15日(土)は予約制の朝カフェを銀座で初開催!
9月16日(日)はオープンカフェを新潟県燕市で初開催!
9月22~は気の済むまで佐渡ヶ島天空の棚田で稲刈り(稲刈リフレッシュ希望の方、ご飯、振る舞います。あと、一緒に海入りましょう。もしよかったら!)

スケジュール http://urx.blue/FJyI

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